M&A用語集

M&A用語集

M&A・ファイナンスの重要用語を31語収録

DCF法

バリュエーション

Discounted Cash Flow

将来のフリーキャッシュフロー(FCF)を加重平均資本コスト(WACC)で割り引いて企業価値を算出する手法。M&Aにおけるバリュエーションの中核的手法であり、事業計画の信頼性がそのまま評価結果の精度に反映される。ターミナルバリューの算定方法(永久成長率法 or EV/EBITDAマルチプル法)によって結果が大きく変動するため、感応度分析(シナリオ分析)の併用が実務上不可欠。

EV/EBITDA倍率

バリュエーション

EV/EBITDA Multiple

企業価値(EV: Enterprise Value)をEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)で割った指標。資本構成や税制の違いを排除して企業間比較ができるため、M&Aにおける類似会社比較法・類似取引比較法の中心的マルチプル。日本の中堅企業M&Aでは5〜10倍程度が目安だが、業種・成長性・市場環境によって大きく異なる。

PER(株価収益率)

バリュエーション

Price Earnings Ratio

株価を1株当たり純利益(EPS)で割った指標。上場企業の株式価値評価で最も広く使われるマルチプル。PERが高いほど市場から将来の利益成長が期待されていることを示す。TOB価格の妥当性検討や、非上場企業の株式価値算定における類似上場会社法でも活用される。業種平均PERとの比較が一般的。

エンタープライズバリュー(EV)

バリュエーション

Enterprise Value

時価総額+有利子負債-現預金で算出される企業全体の価値。株主価値だけでなく債権者価値も含む概念で、資本構成に中立な企業価値指標。M&Aの取引価格はEVベースで議論されることが多く、ここからネットデットを差し引いてエクイティバリュー(株式価値)を算出する。事業価値(Operating Value)と非事業用資産の合計としても計算可能。

プレミアム率

バリュエーション

Acquisition Premium

M&A取引価格が市場株価を上回る割合。例えばTOB価格が市場株価1,000円に対して1,400円であればプレミアム率は40%。プレミアムはコントロールプレミアム(経営権取得の対価)とシナジープレミアム(統合効果の先取り)で構成される。日本のTOBでは30〜50%程度が一般的。過度なプレミアムは投資回収を困難にするため注意が必要。

スクイーズアウト

スキーム

Squeeze Out

少数株主を強制的に排除し、対象会社を完全子会社化する手法の総称。90%以上保有時の株式等売渡請求(特別支配株主の売渡請求)や、株式併合を利用した方法が一般的。TOBやMBO後の完全子会社化プロセスで使われる。少数株主には公正な価格での売却が保証され、価格に不満がある場合は裁判所に価格決定の申立てが可能。

公開買付け(TOB)

スキーム

Tender Offer Bid

上場企業の株式等を市場外で不特定多数の株主から一定価格・一定期間で買い付ける制度。金融商品取引法により、市場外取引で株式所有割合が1/3を超える場合等に義務付けられる。株主への公平な売却機会の提供が目的であり、買付期間は20〜60営業日。部分TOB(上限付き)と全部TOBがある。

MBO(マネジメント・バイアウト)

スキーム

Management Buyout

企業の経営陣が自社の株式を取得して経営権を握る手法。上場企業の非公開化(ゴーイングプライベート)で広く活用される。構造的な利益相反(経営陣が売り手と買い手を兼ねる)が課題であり、特別委員会の設置やマジョリティ・オブ・マイノリティ条件の設定など公正性担保措置が重要。PEファンドとの共同実施が一般的。

LBO(レバレッジド・バイアウト)

スキーム

Leveraged Buyout

買収対象企業のキャッシュフローや資産を担保にした借入(レバレッジ)により、少額の自己資金で企業買収を実現する手法。PEファンドの投資手法の中核であり、エクイティ30〜40%・シニアローン40〜50%・メザニン10〜20%程度の資金構造が典型的。レバレッジ効果によりエクイティIRRの増幅が期待できるが、デフォルトリスクも高い。

カーブアウト

スキーム

Carve-Out

企業グループから特定の事業や子会社を切り出して売却・独立させる手法。ノンコア事業の売却による経営資源の集中や、独立によるバリューアップを目的とする。会社分割・事業譲渡・株式譲渡のいずれかで実行される。カーブアウト財務諸表の作成やスタンドアロンイシュー(切り出し後の自立性)の検討が実務上の重要論点。

WACC(加重平均資本コスト)

ファイナンス

Weighted Average Cost of Capital

株主資本コストと負債コストを資本構成比で加重平均した資本コスト。DCF法でFCFを割り引く際の割引率として使用される。株主資本コストはCAPM(資本資産価格モデル)で算定するのが一般的。ベータ値・リスクフリーレート・マーケットリスクプレミアム・サイズプレミアムなどが構成要素。WACCの設定次第で企業価値が大きく変動するため、前提条件の合理性が重要。

フリーキャッシュフロー(FCF)

ファイナンス

Free Cash Flow

事業活動から生み出されるキャッシュフローから設備投資を差し引いた、株主と債権者に帰属する自由に使えるキャッシュフロー。営業利益×(1-税率)+減価償却費-設備投資-運転資本増加で算出。DCF法の基礎となるだけでなく、LBOにおける返済能力の評価指標としても重要。

IRR(内部収益率)

ファイナンス

Internal Rate of Return

投資のNPV(正味現在価値)がゼロになる割引率。PEファンドの投資パフォーマンス評価で最も重要な指標であり、一般的にグロスIRR20%以上がハードルレートとされる。投資期間が短いほどIRRは高くなるため、投資倍率(MoIC: Multiple on Invested Capital)と併せて評価することが重要。

ネットデット

ファイナンス

Net Debt

有利子負債から現預金を差し引いた純有利子負債。EV(企業価値)からネットデットを差し引くとエクイティバリュー(株式価値)が算出される。M&Aの価格交渉ではネットデットの定義(リース債務の扱い、デットライクアイテムの範囲)が論点になることが多い。

メザニンファイナンス

ファイナンス

Mezzanine Finance

シニアローンとエクイティの中間に位置するハイブリッドな資金調達手法。劣後ローン、優先株式、ワラント付ローン等が含まれる。LBOにおいてシニアローンでは調達しきれない部分を補完する役割を果たす。シニアローンより高い金利が設定されるが、エクイティよりは返済優先度が高い。

デューデリジェンス(DD)

法務

Due Diligence

M&Aにおいて買い手が対象会社の財務・法務・税務・事業・人事等を詳細に調査するプロセス。リスクの洗い出しと買収価格の妥当性検証が目的。発見されたリスクは表明保証条項や補償条項(インデムニティ)に反映され、深刻な問題が発見された場合は取引中止(ブレイク)の判断材料にもなる。期間は中小企業で2〜4週間、大企業で1〜3ヶ月。

表明保証

法務

Representations and Warranties

株式譲渡契約(SPA)において、売り手が対象会社の状態に関する一定の事実を「真実かつ正確である」と表明し保証する条項。財務諸表の正確性、簿外債務の不存在、法令遵守、訴訟の不存在などが典型的な項目。表明保証違反が発覚した場合は補償条項(インデムニティ)に基づき損害賠償請求が可能。

株式譲渡契約(SPA)

法務

Share Purchase Agreement

株式取得によるM&Aで締結される売買契約。譲渡対象株式・譲渡価格・クロージング条件・表明保証・補償条項・競業避止義務等を規定する。M&A契約の中核文書であり、LOI(基本合意書)→DD→SPA締結→クロージングという流れで進行する。価格調整メカニズム(ロックドボックス方式やクロージング後調整方式)も重要な交渉項目。

補償条項(インデムニティ)

法務

Indemnity

表明保証違反や特定のリスク顕在化時に、売り手が買い手に対して損害を補償する義務を定めた契約条項。補償の上限額(Cap)、最低請求額(De Minimis)、バスケット(Basket/免責額)、補償期間(Survival Period)などが交渉のポイント。特別補償(Special Indemnity)として特定のDD発見事項をカバーすることもある。

COC条項(チェンジ・オブ・コントロール条項)

法務

Change of Control Clause

契約当事者の支配権(経営権)が変更された場合に、相手方に契約解除権等を与える条項。取引基本契約、賃貸借契約、ライセンス契約、融資契約等に含まれることが多い。M&AのDDにおいてCOC条項の有無と内容の確認は必須であり、重要契約にCOC条項がある場合は取引先との事前協議が必要。

フェアネス・オピニオン

法務

Fairness Opinion

第三者の専門機関(FA・監査法人等)が、M&A取引の価格や条件が財務的観点から「公正(フェア)」であることを意見表明する書面。取締役会が意思決定の合理性を担保するために取得する。MBO・支配株主による完全子会社化など、利益相反が構造的に存在する案件で特に重要視される。

PMI(統合後経営)

PMI

Post Merger Integration

M&A完了後に行う経営統合プロセス。組織・人事制度・ITシステム・業務プロセス・企業文化の統合を計画的に進める。100日プラン(Day 1〜Day 100)として初期統合計画を策定し、シナジー実現に向けたロードマップを実行する。統計的にM&Aの失敗の60〜70%はPMIの不備に起因するとされ、M&A成功の鍵を握る最重要フェーズ。

シナジー効果

PMI

Synergy

M&Aにより統合した企業が、個別に事業を行う場合よりも高い価値を生み出す効果。売上シナジー(クロスセル、新市場参入)、コストシナジー(重複部門の統合、調達コスト削減)、財務シナジー(資金調達力の向上)に大別される。シナジーの定量的見積もりはM&Aの価格交渉や投資判断の基礎となるが、実現の確実性・時間軸の精査が重要。

Day 1(デイワン)

PMI

Day One

M&Aクロージング日(経営権移転日)のこと。Day 1に向けて経営体制・意思決定プロセス・社内外コミュニケーションの準備を行うDay 1 Readinessの確保が重要。従業員・取引先・顧客への統合メッセージ発信、経営陣の配置、初日のオペレーション継続性の担保などがDay 1プランニングの主要テーマ。

スタンドアロンイシュー

PMI

Standalone Issue

カーブアウト案件において、切り出された事業が親会社から独立して自立的に運営できるか(スタンドアロン化)に関する課題の総称。共有サービス(経理・IT・人事)の自前化、親会社ブランドの使用可否、グループ間取引の見直し、システム分離(Day 2対応)などが典型的な論点。TSA(移行サービス契約)で一時的に親会社のサポートを受けることも多い。

LOI(基本合意書)

一般

Letter of Intent

M&A交渉の初期段階で売り手と買い手が基本的な取引条件について合意する文書。取引の概要、スケジュール、独占交渉権、秘密保持義務、デューデリジェンスの実施等を規定する。法的拘束力は独占交渉権・秘密保持等の一部条項にのみ限定されるのが一般的。MOU(Memorandum of Understanding)と呼ばれることもある。

NDA(秘密保持契約)

一般

Non-Disclosure Agreement

M&Aプロセスの最初期段階で締結される秘密保持契約。対象会社の非公開情報を受領する買い手候補が、当該情報の秘密保持義務を負う。秘密情報の範囲、使用目的の制限、開示先の制限、有効期間、義務違反時の損害賠償・差止請求等を規定。M&A情報の漏洩は株価への影響が大きいため、適切な管理が不可欠。

IM(インフォメーション・メモランダム)

一般

Information Memorandum

売り手側FAが作成する対象会社の詳細情報資料。事業概要、財務情報、市場環境、成長戦略、組織体制などを体系的にまとめたもの。NDA締結後の買い手候補に開示され、初期的な投資判断・バリュエーション・入札価格の基礎資料となる。ティーザー(匿名概要書)→NDA→IM→DDという情報開示の段階的プロセスで活用される。

FA(フィナンシャル・アドバイザー)

一般

Financial Advisor

M&Aにおいて売り手または買い手に対し、戦略策定・バリュエーション・相手先探索・交渉支援・契約サポート等の助言を行う専門機関。投資銀行・証券会社・M&A仲介会社・独立系アドバイザリーファームなどが担う。成功報酬型(レーマン方式等)と月額報酬型(リテーナー方式)の報酬体系がある。

コベナンツ(財務制限条項)

一般

Financial Covenants

融資契約においてレンダー(貸し手)が借り手に課す財務上・行動上の制限条項。DSCR(債務返済カバー率)、レバレッジレシオ(Net Debt/EBITDA)等の財務指標維持を求める維持条項と、追加借入・配当・資産売却等を制限する行動制限条項がある。LBOローンでは特に厳格に設定され、違反時はデフォルト事由となる。

少数株主

一般

Minority Shareholder

議決権の過半数を保有しない株主の総称。M&Aにおいては、TOBやMBO後に残存する少数株主の保護が重要な論点となる。少数株主には株式買取請求権、価格決定の申立権、株主代表訴訟提起権等の権利が認められる。スクイーズアウトによる完全子会社化では、少数株主に対する公正な対価の確保が法的要件。

事例を探す