株式取得

Stock Acquisition

対象企業の株式を取得して経営権を獲得するM&Aの基本手法。相対取引・市場買付など複数の方法がある。

株式取得とは

株式取得は、対象企業(ターゲット)の発行済株式を買い取ることで経営権を取得するM&A手法です。日本国内のM&A案件で最も多く使われるスキームであり、中小企業の事業承継から上場企業間の大型再編まで幅広く活用されています。

取得方法の分類

株式取得には主に以下の方法があります。

  1. 相対取引(私的交渉): 既存株主と個別に交渉して株式を買い取る方法。非上場企業のM&Aで最も一般的です。
  2. 市場買付: 証券取引所を通じて株式を購入する方法。上場企業の株式を段階的に取得する場合に用います。
  3. 公開買付(TOB): 不特定多数の株主に対して、一定価格で株式買取を公告する方法。発行済株式の1/3超を取得する場合は原則TOBが義務付けられます。

実務上のポイント

株式取得では、デューデリジェンス(DD) が極めて重要です。対象企業の財務状況、法務リスク、税務リスク、事業の将来性などを多角的に調査します。

株式譲渡契約(SPA)には、表明保証条項・補償条項・前提条件(クロージング条件)などが盛り込まれます。特に、チェンジ・オブ・コントロール条項(COC条項)が取引先契約に含まれていないかの確認は必須です。

バリュエーション

株式取得価格の算定では、DCF法(将来キャッシュフローの割引現在価値)、類似会社比較法(EV/EBITDA倍率やPER)、純資産法などが用いられます。非上場企業では複数手法の併用が一般的です。中小企業M&Aでは年倍法(時価純資産+営業利益の数年分)も実務上広く使われています。

株式取得の適用場面

非上場の中小企業のオーナーチェンジ型M&A(事業承継)では、株式取得が第一選択肢となるケースがほとんどです。買い手にとっては対象企業の法人格・許認可・取引関係をそのまま引き継げるため、事業の継続性を重視する場合に適しています。一方、上場企業のグループ再編や子会社化でも頻繁に用いられます。

税務上の取扱い

株式譲渡による売り手側の課税は、個人株主であれば申告分離課税(約20%)、法人株主であれば法人税が課されます。買い手側では、株式取得価額がそのまま投資簿価となり、のれんの税務償却はできません。この点は事業譲渡との大きな違いです。

独占禁止法上の届出

一定規模以上の株式取得では、公正取引委員会への事前届出が必要です(国内売上高合計200億円超の会社グループが、国内売上高50億円超の会社の株式を20%超・50%超取得する場合)。

メリット

  • 手続きがシンプルで最も一般的な手法
  • 対象企業の法人格を維持できる(許認可・契約関係の承継が容易)
  • 少数株主を残した部分取得も可能
  • 相対取引であれば秘匿性が高い

デメリット

  • 簿外債務・偶発債務を引き継ぐリスクがある
  • 少数株主が残る場合の利害調整が必要
  • のれんの税務償却ができない
  • デューデリジェンスの範囲が広くなりやすい

よくある質問(FAQ)

株式取得と事業譲渡の違いは?
株式取得は会社の所有権(株式)を取得するため法人格が維持されます。事業譲渡は個別の事業資産・負債を選択的に譲受するため、不要な負債を引き継がない柔軟性がある一方、契約や許認可の個別承継が必要です。
100%取得しないとM&Aにならない?
いいえ。議決権の過半数(50%超)を取得すれば子会社化でき、経営権を実質支配できます。2/3以上なら特別決議の単独可決が可能です。
デューデリジェンスにはどのくらいの期間がかかる?
案件の規模や複雑性によりますが、一般的に中小企業で2〜4週間、大企業で1〜3ヶ月程度です。財務DD・法務DD・税務DDが主要な領域です。
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