第三者割当増資
Third-Party Allotment
特定の第三者に新株を割り当てる資金調達兼資本提携手法。出資を通じて資本関係を構築し経営参画する。
第三者割当増資とは
第三者割当増資は、既存株主以外の特定の第三者に対して新株を発行・割り当てる手法です。M&Aの文脈では、資金調達と資本提携を同時に実現する手法として活用されます。
スキームの仕組み
発行会社が新株を発行し、特定の引受先(第三者)がその新株を取得します。引受先は出資金額に応じた持分比率を取得し、発行会社の株主となります。
- 発行会社: 新株発行により資金を調達
- 引受先: 出資により株式を取得し、議決権を獲得
- 既存株主: 持分比率が希薄化(ダイリューション)
主な活用ケース
- 資本業務提携: 事業シナジーを期待する企業間の資本関係構築
- スタートアップ投資: VCやCVCによる成長企業への出資
- 経営再建: 財務基盤の強化を目的とした資本注入
- 敵対的買収への対抗: ホワイトナイト(友好的買収者)への新株割当
- MBO支援: PEファンドによる出資
法的手続きと規制
非上場会社の場合:
- 取締役会設置会社: 取締役会決議(有利発行の場合は株主総会の特別決議)
- 非設置会社: 株主総会の特別決議
上場会社の場合:
- 有利発行規制: 市場価格から10%以上のディスカウントは「特に有利な金額」として株主総会の特別決議が必要
- 希薄化規制: 議決権の25%以上の希薄化が生じる場合等は、株主の意思確認手続きが必要(東証規則)
- 大規模第三者割当: 支配権の異動を伴う場合は独立委員会の意見取得等が求められる
払込金額の算定
払込金額の算定は、発行会社の公正な企業価値に基づいて行われます。
- 上場会社: 直近の市場株価を基準とし、通常は10%以内のディスカウントで設定
- 非上場会社: DCF法、純資産法、類似会社比較法などで株式価値を算定
税務上の取扱い
- 発行会社: 払込金額が資本金等の増加として処理。有利発行の場合、時価との差額が受贈益として課税される可能性がある
- 引受先: 取得した株式の取得原価は払込金額
株式取得との比較
第三者割当増資は「新株発行」であり、既存株式の売買ではありません。このため、資金は発行会社に入り(既存株主には入らない)、発行済株式総数が増加します。既存オーナーが対価を受け取りたい場合は、株式譲渡を選択する必要があります。
メリット
- ✓発行会社に直接資金が入る(財務基盤の強化)
- ✓既存株主との関係を維持しつつ新たな資本パートナーを迎えられる
- ✓手続きが比較的シンプル
- ✓段階的な資本関係の構築が可能
デメリット
- ✗既存株主の持分が希薄化する
- ✗有利発行の場合は株主総会の特別決議が必要
- ✗既存オーナーが対価を受け取れない(資金は会社に入る)
- ✗大規模発行の場合は東証規制への対応が必要
よくある質問(FAQ)
第三者割当増資で経営権を取得できる?▼
発行する新株数が十分であれば、議決権の過半数を取得して経営権を握ることは可能です。ただし、大規模な希薄化を伴うため、東証規則による株主意思確認手続きが必要になります。
有利発行とは?▼
市場価格や公正価値と比較して「特に有利な金額」で新株を発行することです。上場会社の場合、市場株価から10%以上ディスカウントした金額が有利発行に該当すると一般的に解されています。
第三者割当増資と公募増資の違いは?▼
第三者割当増資は特定の引受先に割り当てるのに対し、公募増資は不特定多数の投資家を対象とします。第三者割当増資は引受先との関係構築が目的であることが多いです。